EPA、DHA(不飽和脂肪酸)の基礎知識


皆さんはEPA,DHA、リノール酸などの言葉を良くお聞きになるとおもいます。これらは不飽和脂肪酸の一種であることはご存知だと思いますが、これらの不飽和脂肪酸についてもう少し詳しくお話しましょう。

T.不飽和脂肪酸の2系統 不飽和脂肪酸には大きく2つの種類があります。

ω−3系> ひとつはω−3系(オメガ3系)とよばれる種類のもので、EPA,DHA,αリノレン酸(紫蘇油、大豆油)などが代表的なものです。 EPAとDHAは同じ系統になりますが、両者の働きには多少の違いがあります。

 

DHA

EPA

血小板凝集抑制

(閉塞性動脈硬化症を適応症とする医薬品として認定)

中性脂肪低下

コレステロール低下

血圧低下

脳神経活性化

ガン抑制

アレルギー抑制

ω−6系> もう一つはω−3系(オメガ6系)とよばれる種類のものでリノール酸、γリノレン酸が代表的なものです。

リノール酸(紅花油=サフラワー油,ひまわり油、コーン油)
人体内で合成されるが、阻害要因が多いので、なるべくγリノレン酸で摂りましょう。

γリノレン酸(月見草油)
γリノレン酸は血栓を防ぎ、血行を良くするので脳梗塞や心筋梗塞の予防に、免疫機能を高めるのでガン、喘息、アトピー性皮膚炎に、炎症を抑える働きがあるので関節炎やリューマチにと広く栄養補助食品として使われております。

U.プロスタグランディン(生理活性物質)

脂肪酸はプロスタグランディンになって働きます。プロスタグランディンはホルモンに似た作用を持っており、体が必要な状態になったときに、その場所その器官で作られ、病的に衰えた機能を正常化します。ホルモンが血液を通じて全身の細胞に影響を及ぼすのにたいして、プロスタグランディンは必要とされる細胞()に含まれているリン脂質中の不飽和脂肪酸(ω−3、ω−6系)から生成されます。生成された後は、迅速に細胞内に取り込まれて使われるので、体の中に蓄えておくことはできません。現在では数十種類のプロスタグランディンが発見されており、驚くほどたくさんの生理作用に関与していることが分かっています。

この大切なプロスタグランディンは不飽和脂肪酸から作られますが、もとになる脂肪酸によって、出来てくるものが違ってきます。ω−6系からは第1、第2系統が、ω−3系からは第3系統のプロスタグランディンが作られます。(図1を参考にしてください。)
不飽和脂肪酸とプロスタグランディンの関係


V.各プロスタグランディンのバランスが健康を保ちます。

さて、この3系統のプロスタグランディンがバランス良く生成されていれば身体は健康でいられるわけです。というのはそれぞれの系統で生成されるプロスタグランディンで身体の機能のバランスが取られているからです。

例をあげて説明しましょう。E1(第一系列のE群プロスタグランディン)は血小板の凝集を抑制する作用があります。また、血管拡張作用があり血流を良くし、血圧を下げる作用があります。E2は強力な血小板凝集作用と血管収縮作用を持っています。アラキドン酸は動物性脂肪からも合成されしかも生成スピードがE1の2倍に近いので、動物性脂肪の多い食事を続けていると、血栓性(脳梗塞、心筋梗塞など)の疾患を招くことになります。E3はE2と反する作用である血小板凝集抑制作用、血管収縮抑制作用を持っています。このため、EPAを多く含む魚肉を多く摂っている人には、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞などの病気が少ないことがわかっています。

このようにプロスタグランディンは各系統により、似た作用や、相反する作用を持つものがあって、おのおのがバランスを保つことによって、お互いに作用しあって体の平衡を保っているのです。つまり不飽和脂肪酸もバランス良くとらなければいけない訳です。

一昔前にリノール酸・コレステロール神話というのがありました。植物から採れる不飽和脂肪酸であるリノール酸は、コレステロールの沈着を防ぐ善玉である、と言うことで日本全国のご家庭の油がいっせいに紅花油、コーン油などに代わってしまいました。油そのものには何の罪もありませんが、先ほどお話したようにバランスが大事なのです。

実は、リノール酸は米飯、パンを始め、たいていの食べ物に多く含まれている成分ですから、別に植物油から摂らなくても十分に間に合っているのです。従って栄養補助食品として摂るならばEPA、DHAを摂るべきといえるでしょう。

<参考>今回は不飽和脂肪酸を中心にお話しましたが、脂肪酸は大きく次の4つに分類されます

脂肪酸の分類
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